( EVENT REPORT )
米・欧・中が競合する、世界のテクノロジー規制
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General Session (Opening Session)
IAPP Global Privacy Summit 2024 現地レポート[Vol.2]
公開:2024/04/15 執筆:株式会社プライバシーテック
世界中のプライバシー専門家が集う国際会議「IAPP Global Privacy Summit 2024」が、2024年4月1日〜4日の日程で、東京よりも一足早く桜が満開を迎えた米国ワシントンD.C.で開催されました。株式会社プライバシーテックは2年ぶりに現地参加。多くのセッションの中から選りすぐりのスピーチ・セッションの内容をお届けします。

◆ この記事でわかること
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・General Session (Opening Session)オープニングセッションの内容
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IAPP Global Privacy Summit 2024 現地レポート[Vol.2]の今回は、実際のセッション内容をお届けしたいと思います。
まずは、今回のカンファレンスの序章となるGeneral Session (Opening Session)です。
General Session (Opening Session)

話者
アヌ・ブラッドフォード氏(コロンビア大学法科大学院教授(法学・国際組織論))
Anu Bradford, Author, Professor of Law, Columbia Law School
EU法、デジタル規制、国際貿易法、比較国際独占禁止法の専門家。EU法、デジタル規制、国際貿易法、比較国際独占禁止法の専門家。著書「Digital Empires: The Global Battle to Regulate Technology」(2023年9月、オックスフォード大学出版局)は、フィナンシャル・タイムズ紙で2023年のベストブックのひとつに選ばれた。
米・欧・中が競合する、世界のテクノロジー規制
現在のデジタル時代において、世界にはテクノロジーを規制するための3つの競合する枠組み(アメリカの市場主導型規制モデル、中国の国家主導型規制モデル、ヨーロッパの権利主導型規制モデル)が存在する。これら3つの枠組みは互いを排除し合うものではなく、アメリカ、中国、ヨーロッパというそれぞれの”帝国”が、世界での影響力を拡大するために利用している。
アメリカとヨーロッパの間で進行するテクノロジーに対する規制合戦は、イノベーションへの影響や、発展途上国において中国の権威主義的なモデルが魅力的に見えてしまうという懸念をもたらしている。民主主義国家は、権威主義的な政権やハイテク企業が支配権を握らないよう、テクノロジーが民主的に統治されるよう協力していかなければならない。
規制は誰のため?企業か、国家か、人間か。
デジタル経済のガバナンスに対するアプローチは、それぞれに異なっている。
アメリカの市場主導型規制モデル
自由市場、自由インターネット、革新奨励という3つの段階を最大限に活用することを前提としており、テクノロジーのガバナンスは企業に委ねられている。テクノ・オプティミスト(技術楽観主義者)、テクノ・リバタリアン(技術自由原理主義者)的な世界観。
例えばFacebookは、160ヶ国以上で30億人に利用されているなど、ハイテク企業が規制に縛られることなく自由に事業を展開した結果、世界中の人々がアメリカ企業の製品やサービスを利用している状況が生まれた。
中国の国家主導型規制モデル
自国をテクノロジー大国にする、という意識を持つ。国家資源をテクノロジー全般に投入。監視や検閲、プロパガンダのツールとしてテクノロジーを用いることで、強大な政治力による国内の社会的安定を確保する。
中国のハイテク企業は、世界のあらゆる場所へ進出。5Gネットワークや海底ケーブル、データセンター、スマートシティの建設等により、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ、そしてヨーロッパの一部に至るまで、”デジタル・シルクロード”に沿って、インフラの拡大を武器に権威主義モデルを拡張している。
ヨーロッパの権利主導型規制モデル
基本的人権の保護や社会における民主的な構造の維持、利益の公平な分配等、人間中心のデジタルトランスフォーメーションを目指している。

政治的覇権、国家間規制闘争、官民の主導権争い
デジタル世界が3つの勢力(アメリカのハイテク企業、中国のインフラ、そしてそれらを管理するヨーロッパの規制)に分裂し、それぞれが同時に存在・対立することで、多くの市場において衝突が引き起こされている。
横の戦い
デジタル帝国同士の戦い(政府 vs 政府)。
例1:米中における経済的覇権、技術的覇権、地政学的、イデオロギー的、そして最終的には軍事的覇権をめぐる技術戦争。
例2:米欧における規制闘争。ヨーロッパに進出したアメリカ企業の自由主義に対し、ヨーロッパの人々がプライバシーの侵害等を理由に反発。
縦の戦い
支配しようとする政府とハイテク企業の戦い(政府 vs 企業)。アメリカにおいても、ハイテク企業への規制を導入すべきか議論がなされている。
米欧の技術規制をめぐる世界の動き
自由市場とテクノ・リバタニアリズムを中心とするアメリカの規制モデルは、世界的に失速しつつあると予測される。個人のプライバシーに対するリスクや脅威等を、懸念する声が世界で高まっているためである。一方で、ヨーロッパの権利主導型モデルを模倣する民主主義国家が増えている。その例として、カナダやオーストラリア、日本等が挙げられる。
米欧における技術革新と規制の違い
ただし、ヨーロッパの権利主導型モデルが今日のデジタル世界において勝利したとは言い切れず、以下の通り懸念点も残る。
懸念点1:ヨーロッパの権利主導型モデルは技術革新に合致するか。
ヨーロッパの権利主導型モデルでは、公益を最も保護している。革新を生み出すテクノロジーを規制したがるヨーロッパでは、ハイテク企業が規模の拡大や、成長の課題に直面している。法律的な障壁、文化的な障壁、そして言語的な障壁がヨーロッパ市場全体に存在する。
懸念点2:ヨーロッパには統合深化された資本市場がない。
数回の資金調達は成功しても、その後の資金調達に困る企業が多い。資金が必要になるとアメリカのベンチャーキャピタルに頼る、あるいはアメリカの巨大ハイテク企業に買収されてしまう。
懸念点3:倒産リスクが高すぎる。
ヨーロッパの企業家にとって、倒産後のチャンスは二度と巡ってこない。一方のアメリカでは、起業に失敗したとしても汚名を着せられることはない。何度でもやり直せるため、それが技術革新に多大なプラスの影響を与えており、ヨーロッパと比較して優れていると言える点である。
また、アメリカが統合と多様性の国であるが故に、10億ドル以上のアメリカにおける新興企業の50%以上を移民が設立しており、その中には成功したテック企業も多い。例えば、かの有名なApple創業者のスティーブ・ジョブズは、シリアからの移民である。
その他にも、欧州の規制モデルは施行上問題があり、中国のハイテクモデルを好む権威主義国家が多いことからも、実際には効果的でないかもしれないとの懸念が残る。
中国の技術開発と民主主義への影響
中国の技術開発の成功をもとに世界のデジタル化が進んだ場合、自由民主主義の悪化を招く可能性がある。
ハイテク企業に対する規制を政府主導で迅速に行える中国に対し、アメリカでは立法を議会で可決するのに時間を要し、ヨーロッパでは法制化に長けていても施行に苦労している。
専門家は、民主的な政府が規制を怠れば、テクノロジーは権威主義者に支配されると警告する。今こそ、誰がテクノロジーを統治するのか、テクノロジーは政府が個人を搾取するためのツールであるのか、それとも人間や法の支配、権利や民主的な統治へのコミットメントがテクノロジーと社会、我々の未来を形成するのか、考える時である。
(以上)
※本記事はプライバシーテック(ウンリュエル愛友美)が翻訳、編集しています。
当社では、今回のカンファレンスの詳細版レポートと勉強会を有償(10万円〜)にて提供しています。ご関心がございましたら問い合わせフォームよりご連絡くださいませ。
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